ブログ アジャイル計画 アジャイルのスプリントを製品ロードマップと調和させる方法
更新日:June 4, 2025
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アジャイルのスプリントを製品ロードマップと調和させる方法

ベストプラクティスとGitLabの機能を活用して、製品開発を進めましょう。一元化されたロードマップの作成、レビューセッションの実施、スプリントのライフサイクルの追跡など、製品開発をスムーズに進めるためのポイントを解説します。

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製品チームと開発チームが協力せずに、それぞれ作業している様子を想像してみてください。たとえば、製品チームが12か月分のロードマップを作成して社内に共有したものの、開発チームのレビューは受けてなかったとします。このため、開発チームは、全体の計画を把握しないまま、次のスプリントで予定されている機能の開発を始めました。その影響で、プロジェクトの並行実施、チームキャパシティの考慮、再利用可能なAPIの構築など、本来なら最適なタイミングで進められたはずの機会を逃してしまいます。最終的に、非効率的になり、価値の提供も遅れてしまいます。 短期的な成功と長期的なビジョンのバランスを取るのは簡単ではありません。明確なコミュニケーション、優先事項の調整、そして適切なツールが必要です。このガイドでは、アジャイルのスプリントを戦略的ロードマップと調和させる方法、よくある課題への取り組み方、チームに合わせた実践的なアプローチをご紹介します。

信頼できる唯一の情報源の重要性

長期的目標を含むロードマップに関する、信頼できる一貫した唯一の情報源があれば、チームは常に最新の全体像にアクセスできます。具体的には、ロードマップの情報をひとつのプラットフォームに集約し、定期的に更新することを意味します。逆に、一元化されていない、つまり微妙に差があるロードマップを複数管理する場合、方向性の理解にずれが生じてしまいます。

一元化されたロードマップを作成する

一元化されたロードマップを作成することで、次のことが可能になります。

  • 長期的な戦略を伝える
  • 伝達ミスを最小限に抑える
  • 部門間の足並みが揃いやすくなる
  • 背景を把握しながら、変化に素早く対応する
  • 情報を自分で取得でき、情報を保持する単一の窓口への依存度を減らす

GitLabに関するヒントエピックロードマップ表示を使用すれば、製品計画と進捗の透明性を確保できます。ロードマップ表示を使用すると、進捗の追跡やボトルネックの特定に加え、全体的な目標とスプリントレベルでの実施内容を確実に一致させることができます。

グループのロードマップ表示

ロードマップの共同レビューの実施

プロダクトトリオ(製品チーム、エンジニアリングチーム、ユーザーエクスペリエンスチーム)は連携し、定期的なロードマップのレビューと合意を得る仕組みを作りましょう。共同レビューを行うことで、チーム間の認識が揃い、リスクの早期発見と対処につながります。GitLabのプロダクトマネージャーは、エンジニアリングマネージャー、UXデザイナーと毎月ミーティングを行い、変更内容をレビューしてもらった上で、承認を得ています。Wikiに承認の記録を残しておくことで、スケジュールへの責任を明確にし、社内の他のメンバーに対してオープンに情報を提供しています。

レビューセッションの効果を高める方法

レビューの場を有意義なものにするには、以下のベストプラクティスを意識しましょう。

  • ロードマップの変更頻度に応じて、月ごとまたは四半期ごとの定期的なレビューを設定する。

  • 潜在的なリスクや依存関係をあらかじめ議論することで、製品目標、UXのリードタイム、技術的実現可能性の間の整合性を検証する。

    • ロードマップに組織のビジネス目標が反映されているかどうかを検証する。
    • 設計のタイムラインが現実的であり、技術的な調査や検証の必要性が考慮されていることを確認する。
  • チームのキャパシティの制約を考慮し、作業順序をチームのスキルプロファイルに合うよう工夫して、チームの生産性を最適化する: これには、休暇期間中のスタッフ減少といった状況を見越して計画を立てながら、チームの能力の活用不足やスキルのミスマッチを避けることも含まれます。

  • スコープを正しく設定し、何が達成できるかについて適切な期待値を設定する: 「全部やりたい」という気持ちを抑え、何を優先すべきかを明確にし、段階的に価値を提供するよう心がけることが大切です。タスク間の依存関係を減らしたり、再利用可能なコンポーネントを活用するなど、イテレーションの改善や開発速度を上げる方法を特定して、最適化できる機会を模索します。

  • トレードオフや優先順位についてオープンに話し合い、多角的な視点を取り入れる: このような協調的なアプローチを取ることで課題に対して新しい視点や発想を取り入れた解決策が見つかり、今後の方向性について合意を得やすくなります。

GitLabに関するヒントGitLab Wikiを活用してロードマップ機能を補完しましょう。Wikiには、ビジネス上の根拠、ユーザー調査へのリンク、RICEスコア、依存関係やリスクに関する詳細など、製品ロードマップに関する幅広いコンテキストを記載できます。アクセスしやすいようにロードマップへの直リンクを記載し、今後のディスカッションスレッド機能を活用して、非同期コラボレーションを促進し、チームからのフィードバックを得られるようにしましょう。

PlanFlow製品のロードマップ

継続的な方向性の検証と進捗測定

製品ロードマップを作成する目的は、予定どおりに進めることだけでなく、顧客に真の価値を提供することです。ユーザーからの継続的なフィードバックや行動データを共有する機会を設けるために、スプリントのサイクルとは別に、定期的にプロダクトトリオの三者で集まる場を設けることを検討してください。このようなセッションでは、インサイトの確認やトレンドの分析、そしてユーザーの変化し続けるニーズが製品ロードマップに反映されていることを確認します。実際のユーザーから得たインサイトに基づき、ロードマップを更新することで、単に予定していた機能をリリースするだけでなく、顧客にとって本当に重要な価値を提供できます。 顧客にとっての価値は、使いやすさの向上、技術的負債の削減、またはまったく新しい機能の提供など、さまざまです。プロダクトトリオがロードマップのビジョンで一致していれば、達成しようと目指している成果に関しても足並みが揃っている状態だと言えます。 成果の達成に向け順調かどうかを測定するには、想定する成果がどのようなものであるかを明確に定義する必要があります。後からユーザーストーリーを追加するといったスコープクリープ(スコープの拡大)は、価値の提供を遅らせてしまう恐れがあります。さらに、ロードマップに沿っていない作業があれば、価値を提供した後であっても特定し、なぜそうなったのか理由を把握することも重要です。

スプリント計画

製品ロードマップとの整合性を保つには、まずは綿密なスプリント計画を立てる必要があります。ここでは、チームが作業を順調に進め、価値の提供に重点的に取り組むために役立つベストプラクティスをいくつかご紹介します。

  • デリバリーに対して確信を持てるように、求める成果を明確に定義し、範囲を絞り込んで設定する。
  • デリバリーを遅らせる可能性のある遅めの段階での追加や調整を特定し、継続して注力できるようにバッファを設ける。
  • チームと作業順序を調整し、キャパシティやスキルプロファイルを最適化し、依存関係を減らす。
  • 集中力を維持し、納期遵守の確実性を高めるために、チームのキャパシティが一杯になるような計画はしないようにする。スプリント中に発生する可能性のある未知の問題や新たな発見に備えて、バッファ(10%~20%)を設けておきましょう。

スプリント期間中

スプリント期間中にロードマップとの整合性を保ち続けるには、集中力とコミュニケーションに加え、継続的な評価が必要です。価値の提供が目標である一方で、進行中の作業が、事前に決めて計画した成果に沿っているかどうかを確認することも同様に重要です。

  • 進行中の作業をロードマップで定めた成果と照らし合わせて継続的に検証し、各スプリントが全体像に寄与しているかを確認する。
  • 想定している目標や成果に向けて引き続き取り組んでいるかどうか、定期的に確認するようチームに促す。
  • スプリントを通じてオープンなコミュニケーションを保つ:デイリースタンドアップミーティングや非同期なアップデートを用いて、リスクや予定外の作業、依存関係を早い段階で明らかにし、必要に応じて調整します。
  • 何が何でもスプリントに沿って行動する:新たに生じた問題を解決したいという衝動に駆られるのは当然ですが、事前に合意した優先順位を見失うことのないように、計画していなかった作業は慎重に見極める必要があります。
  • スコープクリープを主体的に管理する:スプリントの途中で新たな作業が出てきた場合、それが現在のロードマップで定めた注力対象にあっているかを確認しましょう。たとえ魅力的なアイデアや機能であっても、。直近の価値提供という観点では優先度が低いかもしれません。このような内容は文書化し、今後のイテレーションに含めるか、あとで検討する項目として整理しましょう。現在のスプリントで取り組むものとした優先事項を後回しにするのは避けるべきです。

スプリントレトロスペクティブ(ふりかえり)

スプリントレトロスペクティブでは、チームが目指す成果にどれだけ近づけたかを「ふりかえる」時間を取りましょう。以下の質問を投げかけることをおすすめします。

  • スプリント期間中に、予定外の作業によって価値の提供が遅れたことはなかったか?その原因は何だったか?どのように対応すればよかったか?
  • ロードマップとずれた作業がなかったか。その背景や経緯は?今後にどう活かせるか?そこから学んだことを話し合いましょう。

スプリント計画からスプリントレトロスペクティブまで、ユーザーと関係者に具体的な成果をもたらすことチームの重要な役割です。各ステップで足並みを揃えることで、ロードマップが価値を効率的かつ継続的に提供する道標になります。

GitLabに関するヒントバーンダウンチャートを使用すると、進捗状況が可視化され、早い段階でロードマップからの逸脱が検知できるため、チームが成果の達成に集中しやすくなります。

バーンダウンチャート

ロードマップで定めた成果を確実に実現する

アジャイルのスプリントと戦略的なロードマップを結びつけるには、意図的な取り組み、チームの賛同、そして適切なツールが必要です。信頼できる唯一の情報源としてロードマップを作成し、共同レビューを実施し、進捗状況を測定することで、ビジョンに沿った行動を取ることができます。GitLabの強力な計画機能を活用することで、チームは課題をイノベーションと成長の機会へと変えることができます。

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監修:佐々木 直晴 @naosasaki (GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部 シニアソリューションアーキテクト)

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