ソフトウェアは単にビジネスを推進するものではなく、ビジネスそのものです。しかしながら、組織は開発力に多額の投資を行う一方で、ソフトウェアロジスティクスという重要な要素を見落としがちです。
ソフトウェアロジスティクスには、デリバリー用にコードをパッケージ化した後に行われるすべてのプロセス、つまりプロビジョニング、デプロイ、設定、モニタリング、保守が含まれます。ソフトウェアサプライチェーンの後半部分とみなされるこれらのプロセスは、大変重要です。非常に優れたソリューションを設計したとしても、適切に実行しなければうまくいかない可能性があります。
統計によると、組織内のデベロッパー100人に対して、運用担当者は1人しかいない可能性が高いことが示されており、取り組むべき課題は明らかです。運用担当者は通常、ネットワークエンジニアリングやデータベース管理、プラットフォームエンジニアリング、サイトの信頼性に重点的に取り組んでいます。生成AIの活用によってデベロッパーが作成するコード量が劇的に増えようとしている今、このままではソフトウェアデリバリーの継続が不可能になるというボトルネックが生じます。
従来のアプローチでは不十分な理由
このようにバランスが取れていない状態で従来のアプローチを取った場合、通常、運用チームに負荷がかかりすぎるか、必要に迫られてデベロッパーが運用に詳しくなるかのどちらかになります。どちらもうまくいきません。
運用チームに多大な負荷がかかると、制限の多いプロセスを取らざるを得なくなり、結果としてデリバリー速度が遅くなります。一方、デベロッパーが運用を担当せざるを得なくなると、本来の強みである、コーディングによるビジネス上の問題解決に取り組む時間が減ってしまいます。GitLabの調査結果によると、デベロッパーが通常、新規コードの作成に費やす時間はわずか21%であり、残りの時間は会議や保守作業、事務作業に費やされていることがわかっています。
このような非効率的な状態では不満も出やすく、余計なコストもかかります。イノベーションを起こしても、常にデプロイ待ちの状態となるため、ビジネス価値の損失となります。
ソフトウェアのプレミアムデリバリーモデル
ではソフトウェアデリバリーにおいて、常に信頼性と予測可能性を確保できるとしたらいかがでしょうか?これこそが、ソフトウェアロジスティクスの効率化によって実現できることです。
現代の物流会社が、製品を効率よく倉庫から顧客まで配達できるようにサプライチェーンの効率化を行うことで小売業に革命をもたらしたように、組織はソフトウェアをパッケージレジストリから本番環境までスムーズに移行できるようにする必要があります。
今やプラットフォームエンジニアリングに投資して、開発チーム向けにベストプラクティスとコンポーネントを標準化することで、ソフトウェア開発を加速しようとする組織がますます増えています。ただし、デベロッパーエクスペリエンスだけに焦点を当ててプラットフォームエンジニアリングに取り組んでいるのであれば、本来取り組むべき重要な目標を見落としています。もちろんデベロッパーエクスペリエンスを向上させることは重要です。しかしながら、コードを効果的にデプロイ、設定、モニタリング、保守できるような運用成熟度に達していなければ、コード作成を効率化できたとしても意味がありません。
そこでソフトウェアロジスティクスの出番です。ソフトウェアロジスティクスを最適化すれば、コードの開発速度が向上しても、デプロイのボトルネックや運用面での混乱が生じなくなり、実際のビジネス価値の創出に確実につながるようになります。
ソフトウェアロジスティクスの競争優位性
ソフトウェアロジスティクス戦略を効果的に立てると、次のようないくつかの重要な利点を得られます。
- デリバリーサイクルの短縮:コード完成から本番環境へのデプロイまでにかかる時間が数週間から数日、さらには数時間に短縮されます。
- セキュリティ対策状況の改善:セキュリティを最後のゲートとして実装せずに、開発パイプラインに組み込むことで、開発速度を維持しながら脆弱性を軽減できます。
- 業務効率性の向上:自動化とセルフサービス機能の活用により、限られた人数の運用スタッフでより多くのデベロッパーをサポートできるようになります。
- リソースの有効活用の推進:貴重なデベロッパーが、複雑なデプロイ作業に煩わされることなく、ビジネス価値の創出に注力できるようになります。
効果的なソフトウェアロジスティクスの実現に向けた最適化
あらゆる規模の組織の技術リーダーと話をする中で、ソフトウェアロジスティクスの実装を成功させるには、いくつかの一貫したパターンがあることがわかりました。以下に、ソフトウェアロジスティクスを最適化するための3つのステップをご紹介します。
エンタープライズアプリケーションデリバリーフレームワークの構築
最新のソフトウェアデリバリーにおいては、多様な環境、デプロイ戦略、および運用上の懸念事項に対処できる高度なオーケストレーションが求められます。効果的なフレームワークを構築するには、複数の環境間で相互依存するサービスのデプロイを調整する「リリースオーケストレーション」、自動検証によりロールアウトを制御するカナリアリリースや機能フラグのような「段階的デリバリー戦略」、セキュリティガードレールやコンプライアンス要件を適用しながらポリシーによって制御されたインターフェイスを介して基盤となるインフラを構築する「プロビジョニングの自動化」などの要素を含める必要があります。このフレームワークでは、各ステージで証明書を生成することで、デリバリープロセス全体の検証可能な記録をもたらし、リアルタイムでのリスク評価とコンプライアンス検証を実現します。
統合データストアを備えたプラットフォームの採用
優れた業績を上げている組織では、コードコミットから本番環境のパフォーマンスまで、デリバリーパイプライン全体をカバーする包括的なメトリクスが必要です。測定せずに、何かを管理することはできません。優れたチームは、開発速度から運用の安定性、セキュリティ対策状況まで、あらゆるものを測定対象としています。データファブリックを統合することで、効果的なソフトウェアロジスティクスの神経系統として機能し、ソフトウェアデリバリーライフサイクル全体にわたってそれまでサイロ化されていた情報が関連付けられ、インテリジェントな意思決定と自動化を実現できるようになります。
「ゴールデンパイプライン」によるデベロッパーの自律性の向上
根底にある複雑さをわかっていなくても、デベロッパーがデプロイプロセスを開始できる直感的なインターフェイスに適切なガードレールを組み込んで提供することで、運用チームの負担が軽減されるとともに、デリバリーサイクルが短縮されます。以前、あるプラットフォームエンジニアリングのリーダーも「私たちの仕事は、各チームが自分たちで実行できるように、プラットフォームを使いやすくすることです」とおっしゃっていました。
ソフトウェアロジスティクス:デジタルファーストに取り組む組織にとっての競争上の差別化要因
競争圧力が高まる今、ソフトウェアをテストステージから本番環境に効率的に移行できる能力は、競争上の重要な差別化要因となります。ソフトウェアロジスティクスの考え方を取り入れることで、限られた人数の運用スタッフで開発チームを効果的にサポートできるようになり、セキュリティと信頼性を維持しながらイノベーションを加速できます。
次のステップ
Source Lp Building A Resilient Software Development Practice
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主要なポイント
- ソフトウェアロジスティクスは、プロビジョニング、デプロイ、設定、モニタリング、および保守といった、コードのパッケージ化後の処理に焦点を当て、ソフトウェアサプライチェーンの重要な後半部分を最適化します。
- 通常、全技術スタッフのうち、運用業務に携わるスタッフは1%しかいません。そのため、組織においてはデプロイプロセスを自動化し、デベロッパーエクスペリエンスを向上させるために「ロジスティクスの考え方」が求められます。
- ソフトウェアロジスティクスに「Platform as a Product」のアプローチを取り入れれば、柔軟性を維持しながら標準化を実現し、セキュリティリスクを低減し、さらにデプロイサイクルを短縮できます。