公開:2025年9月25日
17分で読めます
この記事では、ソフトウェア開発におけるロードマップの必要性やメリット、作成方法を解説します。
ソフトウェア開発のプロジェクト管理を適切に行うためには、ロードマップの作成と活用が大切です。実際にロードマップを作成しようとしているものの、具体的な作り方を理解していない人もいるのではないでしょうか。
この記事では、ソフトウェア開発におけるロードマップの必要性やメリット、作成方法を解説します。ロードマップの作成に役立つおすすめのツールも紹介するので、ぜひ参考にして下さい。
ロードマップとは、プロジェクトや事業戦略において設定した目標やゴールまでの道筋を、時系列で視覚化した工程表のことです。より簡潔に説明すると、目標達成のために「いつまでに具体的に何をするのか?」という情報を表でまとめて関係者全員に共有する形で活用します。
ロードマップはビジネスやIT領域において重要な役割を持っており、積極的に活用することで関係者間での連携や課題把握が容易になるため、効率的にプロジェクトを進められます。
ロードマップは大まかに以下の2つの種類に分けられます。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
プロジェクトロードマップは、プロジェクトを円滑に進めるために全体像を管理する目的で活用されるロードマップです。具体的には、プロジェクトの目標や実施するタスクの内容などを記載して作成します。
ロードマップの基本的なフォーマットであり、多くの場合ロードマップと呼ぶ場合は、このプロジェクトロードマップのことを指しているという認識で問題ないでしょう。
プロダクトロードマップとは、特定の製品やサービスに関する目標や戦略、スケジュール計画などが記載されたロードマップのことを指します。具体的にどのようなプロダクトを開発するのかといった方向性や搭載すべき機能、リリース予定日などを整理して活用します。プロダクトロードマップは、製品開発に関係する人間だけでなく、マーケティング部門などにも共有されるツールです。
プロジェクトロードマップは、プロジェクト全体の管理に活用されるのに対して、プロダクトロードマップは製品開発に焦点を絞ったロードマップであるという違いを理解しておくと良いでしょう。
ロードマップを正しく理解するためには、マイルストーンとの違いも把握しておくことが大切です。マイルストーンとは、プロジェクトにおける重要な中間目標や通過点、イベントを指します。
例えば、ソフトウェア開発においては実装やテスト完了などのタイミングでマイルストーンが設置されます。
対してロードマップはプロジェクトの全体の計画を示すものになります。ロードマップの中にマイルストーンを設置することで、目標に対して作業が順調に進んでいるかどうかをより把握しやすくなります。特にプロジェクト期間が長期に及ぶ場合は進捗把握が難しくなるため、適切なフェーズでマイルストーンを設置しておくことが大切です。
ガントチャートとは、プロジェクトにおける細かなタスクや期日を管理して、日々の進捗を確認するためのツールです。一方、ロードマップは、プロジェクトの全体の計画を示すものであり、日々の細かなタスク管理には向いていません。
しかし、ロードマップを作成する際にガントチャートの要素を取り入れる、つまりガントチャートをロードマップのフォーマットとして活用することで全体の計画だけでなく、日々の細かなタスク管理もできるようになるため、より綿密に計画を進められるでしょう。
ガントチャートについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧下さい。
ガントチャートとは?ソフトウェア開発における役割やメリット、作り方
ソフトウェア開発においては、プロジェクト完了までに要件定義や基本設計、開発、テストなどさまざまな工程を踏む必要があり、開発エンジニアだけなく顧客など、プロジェクトに関与する人間もさまざまです。
問題なくプロダクトをリリース・納品するためには関係者全員で計画を共有し、同じ方向を向いてプロジェクトを進めなければなりません。
ロードマップを作成すれば一目で全体の計画を把握できるため、関係者間での情報共有が容易になり、スムーズにプロジェクトを進められます。また、急なトラブルが発生した場合でも事前に計画を立てておけば柔軟に対応することができるため、ロードマップはソフトウェア開発の領域において重要なツールのひとつだと言えます。
ここでは、ソフトウェア開発においてロードマップがもたらす具体的なメリットと効果について解説します。
ロードマップならプロジェクト全体を可視化できるため、進むべき道のりや目標が明確になり、無駄のないスムーズなスケジュール進行ができます。「◯月◯日までにクライアントにシステムを納品する」というように具体的な期限も設定されるため、それに向けた優先順位や行動計画が立てやすくなり、効率よく開発を進められるでしょう。
また、ロードマップでプロジェクトの全体を可視化しておくことで、遅延やリソース不足などのリスクが発生する可能性があるフェーズを事前に予測できるため、必要な対策を早期に検討することも可能です。
ロードマップを作成すれば、関係者間での情報共有が容易になります。プロジェクトを進行する上で関係者間で認識の違いがあると、失敗を招く場合があります。例えば、本来必要のない作業が計画に含まれていると、納期遅延が発生してしまうでしょう。
ロードマップを作成して事前に必要な情報を開発チームや顧客との間で共有しておけば、全員が共通の認識のもとでプロジェクトを進行できるため、方向性がズレることなくタスクを着実に進められるでしょう。また、開発メンバーそれぞれが目標達成のために何をすべきか自分の役割を把握できるでしょう。
ロードマップによって全体のスケジュール計画を示すことで、プロジェクトの進捗管理もしやすくなります。明確な目標があれば、「現状目標に向かってどのくらい作業が進んでいるか」という達成度合いを把握できるため、その中で課題があれば必要に応じて計画を修正したりなどの対応が可能になります。
ガントチャート風に作成すれば、より細かなタスクの進捗を把握できるため、プロジェクトの遅延防止につながります。
ロードマップによって明確な最終目標やマイルストーンが設定されることで、開発メンバーのモチベーション維持や向上にもつなげられます。
ロードマップがない場合、どの方向に向かって何をすべきかが不明瞭であるため、必要のないタスクが発生したりなどのトラブルが生まれる可能性が高まります。その結果、メンバーのモチベーションが低下してしまい、プロジェクト進行に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
ロードマップを活用すればメンバー間の認識のズレも防止でき、互いに情報共有しながら協力的にプロジェクトを進められます。
ここでは、実際のロードマップの作成方法について解説します。
まずは目標設定を行い、プロジェクトとして進むべき方向性を明確化します。目標設定においては、関係者全員が理解できるよう具体性を持たせることが大切です。また、目標達成のハードルが高い場合、メンバーのモチベーション低下を招いてしまう原因にもなるため、実現可能な目標を設定しましょう。
例えば、ソフトウェア開発において顧客にプロダクトを納品するなら、具体的な納品日を目標として設定すると良いでしょう。
目標設定が完了したら、現状抱えている課題を洗い出します。例えば、顧客にプロダクトを予定通り納品するに当たり、「開発リソースは足りているか?」「メンバー構成に問題はないか?」などの現状の状態をチェックしていきます。開発メンバーや顧客に対してもヒアリングを行い、プロジェクト開始前に懸念点がないか確認しておくと良いでしょう。
現状課題があるのにもかかわらずプロジェクトが開始されると、進行中にトラブルが発生してしまう可能性が高くなるため、現状把握を徹底して行い事前に課題を解消しておきましょう。
プロジェクト開始前には進行中に想定されるリスクについても洗い出し、必要な対策を検討しておく必要があります。例えば、市場の変化や顧客の要望により急な仕様変更が発生したり、タスクの依存関係からスケジュールに影響が出たりする可能性もあります。
そういったリスクが実際に起こった時にどのような対策を講じるのかを事前に検討しておくことで柔軟かつ迅速に対応できるため、プロジェクト進行における安定性を高められるでしょう。
マイルストーンは先ほど説明した通り、プロジェクトにおける中間目標を指します。最終的な目標だけでなく、中間目標であるマイルストーンを設定することで進捗管理がしやすくなります。また、長期に及ぶプロジェクトであっても、中間目標があることで着実に作業が進んでいることを実感できるため、メンバーのモチベーションも保ちやすくなるでしょう。
なお、マイルストーンを設定する際にも実現可能かどうかという視点を持って検討することが大切です。
最終目標やマイルストーンなどの情報を実際にスケジュールに組み込んでいきます。スケジュールを作成する際には、ガントチャートや計画表、フローチャートなどのフォーマットを利用します。
ソフトウェア開発ならタスクの細かな期日や依存関係を把握できるガントチャートの利用がおすすめです。ガントチャートを作成する際にはWBS(Work Breakdown Structure)についても理解しておく必要があります。
WBSとは、プロジェクトを達成するためにどのようなタスクが必要なのかを整理したリストを指します。WBSによって細分化されたタスクを利用してガントチャートを作成するため、両者は密接な関係にあります。
ロードマップが無事完成したらプロジェクトにおける関係者全員に共有します。その際、開発メンバーや顧客から計画や内容の修正案が出た場合は、必要に応じてブラッシュアップします。
また、プロジェクトは関係者全員が同じ認識を持って進めなければならないため、丁寧に擦り合わせを行いメンバーの意見をきちんと反映する意識を持つことが大切です。
ロードマップは以下のようなポイントを意識して作成しましょう。
ロードマップは関係者全員に共有するものであるため、誰もが見やすいように視認性の高さを意識することが大切です。
例えば、レイアウトを工夫したり、重要なマイルストーンにはアイコンを適宜活用したりすると良いでしょう。
ロードマップに情報を詰め込み過ぎるとかえって見づらくなり、重要なポイントを見逃してしまう可能性もあるため記載する情報を絞ってから作成しましょう。
ロードマップを作成する際には、設定した目標や計画が実際に実現可能なのかも精査しなければなりません。
例えば、ソフトウェア開発なら設定した納期は現実的であるか?現状のエンジニアのスキルや人数でタスクを完了させられるのか?などの実現性を細かにチェックします。
また、計画を立てる際に開発メンバーや顧客の要望に答え過ぎると全体の方向性がブレたり、実現不可能な計画になってしまったりする可能性があるため注意が必要です。関係者の声はきちんと拾い上げつつも、その情報を実際に計画に反映するかどうかはきちんと検討しなければなりません。
ロードマップは一度作成して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。例えば、アジャイル開発ならスプリント終了時に現状把握と必要に応じてロードマップの修正を行います。
また、プロジェクト進行中にリソース不足から作業の遅延が発生したり、情勢の変化によって新たなニーズが生まれたりした場合なども、変化に合わせて柔軟に更新する必要があります。
ロードマップを作成する手段としては、エクセルやパワーポイント、専用ツールが挙げられます。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
エクセル・パワーポイントはロードマップの作成に使用することができます。エクセルやパワーポイントはビジネスで日常的に使用されるツールでもあるため、使い慣れていれば手軽にロードマップを作成できるでしょう。また、自社で既にMicrosoft Officeを導入しているのであれば、ツール導入の手間を省略できます。
エクセルならセル・列の自由編集、グラフやチャートの挿入、条件付き書式などを活用して自社のプロジェクトに応じて自由にカスタマイズすることが可能です。
パワーポイントなら図形を使ってより視覚的にロードマップを表現できるため、関係者にわかりやすい形で計画を共有したい場合に役立つでしょう。
ロードマップにおいては、専用のプロジェクト管理ツールなどを活用して作成することも可能です。専用ツールならマイルストーン機能やタスクの依存関係の設定など、豊富な機能が搭載されているため、視認性の高いロードマップを作成できるでしょう。関係者全員がツールにアクセスすれば情報共有もスムーズに行えるため、認識のズレの防止にもつながります。
また、直感的に作成できるツールであれば専門知識も不要でロードマップ作成に慣れていない人でも簡単に作成することが可能です。プロジェクト管理ツールの導入においてはコストが発生しますが、ロードマップ作成や共有を効率化できることを考えると高い費用対効果が期待できるでしょう。
プロジェクト管理ツールの選び方については次で詳しく解説します。
プロジェクト管理ツール・サービスを選ぶ際には以下の観点を意識しましょう。
プロジェクト管理ツールを選ぶ際には、まず目的に応じて自社がほしい機能を洗い出しましょう。例えば、目的別の機能を整理すると以下のようになります。
機能 | 目的 |
---|---|
情報共有機能 チャット機能 | ・コミュニケーションや情報共有を円滑に行いたい ・一つのプラットフォームで情報共有したい |
マイルストーン | ・目標管理を適切に行いたい ・プロジェクトの進捗状況を把握したい |
タスク管理機能 | ・タスクを可視化したい ・大量のタスクを整理したい |
工数管理機能 | ・タスクの依存関係を整理したい ・タスクの細かな進捗を管理したい |
自社の目的に応じた機能が搭載されたツールを選ぶことで、スムーズな運用につながるでしょう。
プロジェクト管理ツールを導入する際には、操作性もチェックしておきましょう。直感的に操作できる誰でも扱いやすいツールであれば、プロジェクトマネージャーだけでなく、エンジニアにとってもストレスなく利用できるでしょう。
また、実際の操作において学習コストがかかってしまうと、それだけロードマップ作成にも時間がかかってしまうことになるため、手軽に作成できるようなツールを選ぶことが大切です。無料トライアルを提供しているツールであれば事前に使用感もチェックできます。
プロジェクト管理ツールの導入においては、自社の予算を考慮してコスト面も確認しておくことが大切です。プロジェクト管理ツールにはクラウド型とオンプレミス型の導入形態があり、それぞれコスト感が異なります。
クラウド型はインターネット経由でサービスを利用する形態のことで、自社でサーバーの設置などが不要であるため初期費用を抑えられます。一方、オンプレミス型は自社でサーバーなどのITインフラを用意して導入する形態です。オンプレミスの場合はクラウド型と比較して初期費用が高くなる傾向があります。
また、自社が求める機能や利用人数などプランに応じて料金が異なるため、あわせてチェックしておきましょう。
プロジェクト管理ツールをスムーズに導入・運用するためにも、サポート体制が充実しているかどうかも確認しておきましょう。
サポート体制やドキュメントが充実しているツールであれば、トラブルや不明点が発生した場合でも問題なく解決できるでしょう。
サポート窓口への連絡方法や営業時間、応答までの時間などを事前に確認しておくことで不安のない導入を実現できます。
ソフトウェア開発におけるロードマップの作成・活用なら「GitLab」がおすすめです。ここでは、GitLabの特徴やロードマップ機能について紹介します。
GitLabは、AIを搭載したDevSecOpsプラットフォームです。計画から開発、セキュリティ、運用までソフトウェア開発のライフサイクル全体を効率化する単一のプラットフォームで、高品質なソフトウェア開発を実現できます。
CI/CDパイプラインの構築や実施も容易に行えるため、ビルドやデプロイの自動化も可能です。近年ビジネス環境の変化が激化しており、開発・セキュリティ・運用の3つの要素を統合した「DevSecOps」のアプローチに注目が集まっている中で、GitLabは中小企業からエンタープライズまで世界中の多くの企業で導入されているプラットフォームです。
GitLabではソフトウェア開発におけるプロジェクト管理にも適しています。ロードマップ機能では、エピック(プロジェクトの大枠や目標)とマイルストーンをタイムライン形式(ガントチャート風)で視覚的に表示することが可能であるため、最終的な目標を意識しつつマイルストーン達成に向けた進捗を把握できます。
また、イシュー(タスク)の整理やタスク同士の依存関係の設定、担当者の振り分け、作業時間の測定も行えるため、タスクの見落としの防止や潜在的な障害の回避にもつなげられます。
その他にもスプリントを設定できる機能もあるため、アジャイル開発を計画的に進めたいシーンでもGitLabを活用できます。
最後にロードマップ作成に関するよくある質問とその回答を紹介します。
エクセルの場合は操作に慣れていれば手軽に作成できるメリットはありますが、リアルタイムでの情報共有が難しいというデメリットもあります。例えば、何らかの要因によりスケジュールに変更があり、ロードマップを更新した際にはクラウドサービスなどの媒体を使って共有しなければならず手間がかかります。
一方、GitLabのような専用のツールなら単一のプラットフォームでロードマップの作成から更新、共有までが可能になるため、正確かつ迅速な情報共有が可能になります。また、プロジェクト管理に役立つさまざまな機能が搭載されており、包括的なサポートを受けられるという観点から考えても専用ツールの導入はプロジェクト開発を円滑に進める上で効果的な手段であると言えます。
ロードマップにおいては、プロジェクトマネージャーやリーダー、開発エンジニア、経営層、顧客などを含めて関係者全員が関与しなければなりません。ロードマップを通して目標やマイルストーンなど必要な情報を全員が把握しておくことで、無駄のないスケジュール進行が可能になり、プロジェクトを成功に導けるでしょう。繰り返しにはなりますが、ロードマップを関係者全体に対して正確に共有するには、専用ツールの導入がおすすめです。
ロードマップの作成や活用が失敗してしまう主な原因は以下の通りです。
上記のようなことがあるとロードマップを作成しても有効活用できないため、関係者間での入念な擦り合わせや専用ツールの積極的な活用、定期的なアップデートなどを行うことが大切です。
ソフトウェア開発におけるプロジェクトを成功させるためには、ロードマップの作成は必須です。ロードマップ作成においては、ガントチャートの要素を取り入れることで、より綿密なプロジェクト管理を実現できるでしょう。
AIを搭載したDevSecOpsプラットフォーム「GitLab」なら、プロジェクト管理やロードマップ作成に役立つ豊富な機能を搭載しています。自社のソフトウェア開発におけるプロジェクト管理を適切に行うなら、ぜひGitLabの導入をご検討下さい。
なお、GitLabでは世界39か国、5,000人を超えるDevSecOps専門家のインサイトが詰まった完全版レポートを無料で公開しているので、ぜひこちらもご覧下さい。