公開:2025年8月5日
17分で読めます
この記事ではAWS Summit Japan 2025に出展した際に「GitLab with Amazon Q」について語ったセッションの模様をお伝えします。
GitLabは2025年6月25~26日、千葉・幕張メッセで開催された「AWS Summit Japan 2025」に出展しました。今回の目玉となるソリューションは、発表したばかりの「GitLab with Amazon Q」。ブースにご来場いただいた皆様には直接ご説明でき、デモをご覧いただくなど、大きな注目を集めることができました。このブログでは、会場内のセッションでGitLab with Amazon Qを紹介した模様をお届けします。ゲストはソニービズネットワークス株式会社(以下、SBN) 開発本部 グループマネージャー 濱田 一成氏です。
この日のセッションでは、GitLab シニア ソリューション アーキテクト 小松原 つかさが登壇。金色のジャケットを着た濱田氏を壇上にお招きした小松原は、「金ピカのジャケット! これは、AWSの全12資格を持っているという意味です。そして、濱田さんはAWSアンバサダーを務めていらっしゃいます。セッション終了後にはぜひみなさん一緒に写真をどうぞ」と会場を盛り上げます。実は、濱田氏は日本で初めてGitLab with Amazon Qを使った人物でもあります。講演の後半で、GitLab with Amazon Qについてリアルな使用感を含めて、さらに詳しく解説してくれます。
GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部
シニアパートナーソリューションアーキテクト 小松原 つかさ
GitLab with Amazon Qは2025年4月17日に正式リリースしたばかりの最新ソリューションです。GitLabとAWSが協力して完成させた製品で、GitLabのAIエンジン部分のすべてにおいて、AWSの生成AIサービスを利用します。AIの優秀さもさることながら、その最大の特長は、AWSという巨大なインフラを使うことで、実質的にほぼ無制限にスケールできることです。
パワーユーザーに最適なソリューションで、GitLab側は最上位プランである「Ultimate」契約が必要になります。かつ、AWSの生成AIサービスと密連携したソリューションになっているため、AWS上で稼働させる必要があります。この2点をクリアできれば、すぐにでもGitLab with Amazon Qを利用することができます。
「Amazon Q Developer Pro」がバンドルされていることも朗報です。無料版の「Amazon Q Developer」を、たとえばVS Codeを拡張機能を使ってIDE(統合開発環境)のように利用しようとする場合、月間使用量が制限されるケースがあります。その点、Proは無料版に比べて大幅に制限が緩和されているため、多くのプロジェクトでは実質的に制限なしで利用できそうです。
小松原は、GitLab with Amazon Qについて、「クリエイティブなタスク以外のものをAmazon Qにやってもらえるようになります」と話します。「チケットを切る、だれかにアサインする、だれかがプログラムを書く、だれかがレビューする、だれかがセキュリティをチェックするというプロセスの中で、面白くない仕事をぜんぶAIにやってもらおうという考え方でオーケーですよ」。
AIに配慮したエンタープライズセキュリティも備えています。小松原は、「AIは、結構気をつけておかないと、脆弱性がしれっと入り込んだりします」と指摘します。GitLabは、セキュリティスキャンやセキュリティチェック確認機能、SOC 2など各種コンプライアンスチェック機能を実装しており、「GitLabでガードレール部分をしっかりやりながら、AIのパフォーマンスを思う存分使い切れます」(小松原)。
GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部
シニアパートナーソリューションアーキテクト 小松原 つかさ
小松原はさらに踏み込み、「ものづくりの後工程に来る“苦痛”を和らげてくれる」ソリューションであるとも語ります。多くのエンジニアにとって、サービス開発で最も楽しい時期は、バージョン1を作る時ではないでしょうか。サービスがリリースされると、たとえばデータベースのスキーマ変更に伴うデータマイグレーションなど、システムを知らない人にとっては簡単そうに見えても、実際には大変な仕事が降りかかってきます。とはいえ、サービスを維持し、利益を支えていくことは極めて重要です。そして、その部分に最大のフォーカスを置いているのがGitLabなのです。
「ディスカッションの要約機能などは当然として、サービスを維持し、発展させていくプロセスで生まれる大変さを生成AIが和らげてくれる機能がてんこ盛りです」(小松原)
中でも、セキュリティと脆弱性対策は、「頑張らなきゃいけないんだけども、だれも評価してくれない仕事(笑)」(小松原)かもしれません。たとえば、生成AIに、「ユーザー入力から製品を検索するときに、データベースから製品を検索するNode.jsとExpressの関数を書いてください。できるだけシンプルに、最小限のコードで実装してください。パフォーマンスを重視してください」と命令すると、「データベース検索ですから、当然ながらパフォーマンス重視になります。ただ、AIは肝心のサニティチェックなどをスキップする傾向があるのです。肌感覚では、10回中4回はスキップします」(小松原)。
こうした問題に対し、GitLab with Amazon Qでは、AIを使って脆弱性の修正提案をできるようにしています。Amazon Qのサービスを使って、脆弱性の分析と修正コードを作成。「なぜこの修正アプローチを取ったのか」まで記述させることで、修正理由が説明可能になります。同様のAI機能は、CI/CDのエラートラブルシュートでも使えます。「設定抜け」や「そもそもジョブの定義が間違い」など、単純ミスでコードが動かないというトラブルは意外と多く、ミスが単純すぎるがゆえに原因究明が遅れて時間を浪費しがちです。一方、AIには予断がないため、単純ミスの発見は得意です。小松原は、「このように、つまらない仕事はどんどんAIにやってもらいましょう!」と会場に呼びかけました。
ソニービズネットワークス株式会社
開発本部 グループマネージャー 濱田 一成氏
後半は、濱田氏によるGitLab with Amazon Qレビューです。SBNの最大の業務課題は、「人手が足りない」ことです。メンバーはインフラエンジニアの集団で、アプリ開発にかかわれる人が少なく、インフラ業務との兼務が大半。少人数でプロジェクトを回す最適解としての可能性に賭けて、GitLab with Amazon Q DeveloperのPoCをスタートさせました。PoCで得られたメリットは「開発スピード」と「コード品質」の強化です。
開発スピード面では、GitLab上で開発をして、エンジニアが手直しをするライフサイクルに変更したことで、開発工数を削減できました。濱田氏は、「実際に使ってみてすごく驚いたのが、従来のワークフローに組み込みやすい点。ここが最も良かったと感じた部分です」と話します。イシューを切ってから「/generate」とコメントを入れると、そのイシューに対してAmazon Q Developerが開発を行ってくれます。修正点があれば、インラインでコメントしてAIエージェントに指示すると結果を返してくれます。「つまり、人間に対してやってるフローと全く一緒なのです。GitLab with Amazon Q Developerは、ひとりの開発者がGitLabの中にいるというイメージで使えます」(濱田氏)
コード品質面では、AIが生成したコードをさまざまな手法でレビュー&テストできるようになります。「/review」とコメントしてAIにレビューさせる機能とマージリクエストによる人間のレビューを適切に組み合わせることが可能。GitLabがネイティブに実装するSAST、ペネトレーションテスト、DAST、Pytestなど、言語ごとに存在するテストフレームワークもプロセスに組み込めます。
「マージリクエストで返却されたものに対して/reviewを実行すると、既存のコードのどこにアップデートがかかったか、どこが悪いのか、といったことを一覧にして戻してくれる。さらに、それをAIに修正してもらうことも可能です。AWS CDKやCloudFormationを活用されている方、インフラを構築されてる方に朗報なのは、このセキュリティ機能を応用可能なこと。インフラエンジニアにとっても親和性の高い機能です」(濱田氏)
ソニービズネットワークス株式会社 開発本部 グループマネージャー 濱田 一成氏
濱田氏は、「今後は、AIの生成したコードをレビューすることが人間の仕事になってくるでしょう」と話し、AIの70%問題についても触れます。これは、現代のAIツールだけで実装できるコードの比率は約70%にとどまり、残りの30%は引き続き人間でないと実装できないことを指します。最終的にアプリケーションの品質を担保するのは人間になるため、GitLabのようなソリューションの役割はますます重要になってきます。
より品質向上を目指す活用スタイルについて濱田氏は、IDEの拡張機能やCLIを通してAmazon Q Developerを使うやり方をシェアしてくれました。GitLabにプッシュする前に必ず、/review、/testを実行し、Amazon Q Developerを使ってコードの品質を高めておきます。その後、GitLab上ですべてのコミットに対してコードレビュー/セキュリティスキャンを追加で実行します。これにより、複数のAIエージェントをうまく組み合わせることが可能になり、人間とAIがコラボレーションしながら、すべてのコードの品質を高めることができます。
濱田氏は、「GitLab with Amazon Q Developerは、人間とAIのコラボレーションを自然に実現する次世代ツールだと感じました。従来の、人と人とのコミュニケーションのような感覚で、AIをワークフローに取り込めるところが極めて優秀です。AIの実装したコードを安心して製品に取り込むために、GitLab with Amazon Q Developerはクオリティゲートとして使えそうです」と話してくれました。
左よりソニービズネットワークス株式会社 濱田 一成氏、GitLab合同会社 小松原 つかさ
この日のセッションでは、小松原より書籍の紹介もありました。
これら3冊を紹介しています。
- 『GitLab実践ガイド 第2版』(北山 晋吾・棚井 俊、インプレス) 「GitLabには無償版もあります。無償版のユーザーの方は、ぜひこちらから。この本、超おすすめです。これで勉強していただければ、GitLabの機能を全部マスターすることができます」(小松原)
- 『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみ』(千田 和央、翔泳社**)**
- 『GitLabに学ぶ パフォーマンスを最大化させるドキュメンテーション技術 数千ページにもわたるハンドブックを活用したテキストコミュニケーションの作法』(千田 和央、翔泳社**)** 「アジャイル開発やチケット駆動開発ではドキュメンテーションはすごく大切。基本的なことから、普段の業務を劇的に改善するにあたって直接的なインパクトがあることまでが書かれています。これらの2冊、ぜひご活用ください」(小松原)
抽選の景品:GitLabのTシャツ
抽選の景品:GitLab Tanukiのキーホルダー