OKR(Objectives and Key Results)とは?
OKRとは、「Objectives and Key Results(目標と成果指標)」のことで、目標と成果指標を関連づけた目標管理方法のひとつです。OKRを活用することで、組織、チーム、個人が目指すゴールを共有しやすくなります。また、OKRは短期間での見直し、再設定を繰り返して運用するため、組織やプロジェクトメンバーの変化にも柔軟に対応できます。OKRは1970年代にアメリカのインテル社が導入したことをはじめ、Googleやメルカリ、Sansanなどの大企業で採用されています。
OKRの2つの目標設定方法とその使い分け
目標管理の手法であるOKRは、企業の目標を部署や個人の目標とリンクさせて設定することが特徴です。企業の目標と部署や個人の目標を関連づけることで、高いモチベーション維持や連帯感の強化が期待できます。OKRの「Objectives(目標)」は、定性的でモチベーションアップにつながるもの、1-3ヶ月程度で達成できるものを設定します。「Key Results(成果指標)」は、達成難度を高めに設定し、60〜70%の達成度を現実的な目標として設定します。月または四半期といった短期間で目標設定、評価、最適化のサイクルを回します。OKRには2種類の目標設定方法があり、ひとつは、「ムーンショット」と呼ばれるもので「月に届く」ように難易度が高いものです。達成度は60%程度で成功とみなし、メンバーのチャレンジ精神やイノベーションを支援するものが目的です。もう1つは「ルーフショット」と呼ばれるもので、「屋根に届く」程度の難易度の目標を設定します。達成度は100%で成功とされ、確実に達成できる目標を設定します。一般的にOKRには「ムーンショット」が適しているとされていますが、導入初期など、まだOKRに慣れていない場合には「ルーフショット」を活用して、OKRが定着させるのがおすすめです。
OKRとMBOの違いとは?
目標管理方法には、OKRのほかにMBO(Management by Objectives)があります。OKRが定性的な目標と定量的な成果目標を組み合わせてサイクルを短期間で回すのに対して、MBOでは、社員それぞれの目標を企業の経営目標や部門の目標と連動させて業績アップにつなげます。それぞれのメリット・デメリットを把握して、チームの状態に合わせた目標管理手法を選びましょう。
OKRのメリット・デメリット
メリット
- 月に一回、四半期などのサイクルで目標と成果指標を見直すため、柔軟に変更できる
- 高い目標設定とそれぞれに合わせた成果指標で、チームメンバーのモチベーションが維持できる
デメリット
- 全社的な取り組みとなるため、導入初期に時間と労力がかかる
- OKRを使ったことのある人が少ない(大手企業に限られがち)
MBOのメリット・デメリット
メリット
- 目標を個人が設定するため、自主性が重んじられる
- 課題達成型でタスク管理がしやすい
デメリット
- 個人と組織の目標がずれる場合がある
- 部下の評価を行う管理職の精神的・時間的負担が大きくなりがち
OKRとKPIの違いとは?
OKRとMBOはともに「Objective(目標)」を管理する手法でしたが、成果やパフォーマンスを図る指標には、OKRのほかにKPI(Key Performance Indicator)があります。OKRとKPIはどのように違うのでしょうか。下記の3つの項目について整理してみましょう。
目的と焦点
OKRは、目標(Objectives)とその達成に必要な鍵となる成果(Key Results)に焦点を当てて、組織やチームが達成したい大きな目標の達成度合いを定量的に測定します。一方KPIは、組織やチームのパフォーマンスを測定するための指標です。一般的に売上高、利益率、顧客満足度などが指標となり、ビジネスの健全性や成功を評価するのに使われます。
範囲と対象
OKRでは、組織やチーム全体の戦略的な目標や重要な取り組みに向けて成果を設定し、目標の達成度合いを測定し、進捗状況を追跡します。それに対して KPIは、特定のプロジェクト、部門、または個々の業務に関連するパフォーマンスを測定するために使用されます。KPIは、特定の業務やプロセスの効率性や成果の評価に使用されます。
柔軟性と透明性
OKRは、定期的なレビューやフィードバックを通じて目標を修正するため、柔軟性が高いことがメリットです。それぞれの目標は、チームや他のメンバーと共有されるため、透明性も高めます。一方KPIは、一度定めた指標は固定されることが多く、ほとんどの場合、定期的な見直しなどはありません。また、上級管理職や特定のチームによって管理され、外部に公開されることも滅多にありません。
OKRとKPIは、それぞれ異なる目的や特性を持ちますが、ともに組織やチームの目標達成を促進する指標として、補完的に使用することができます。
なぜOKR? OKRを導入する理由とは
目標管理ツールであるOKRを導入することで期待される成果は大きく4つあります。
企業の目標を明確に共有できるため、組織としての一体感が期待できる
OKRでは、まず企業としての大きな目標を設定し、その目標に対して各部署、プロジェクトチーム、社員一人ひとりの目標や具体的なアクションに落とし込んでいきます。このため、すべてのメンバーが最終的には企業の大きな目標達成を目指しているという一体感が持ちやすくなります。
大きな目標に挑戦できる
さきほどご紹介した2種類の目標設定方法の中でも、ムーンショットは60%ほどの達成率で成功とされるため、大きな目標を掲げて短いサイクルで取り組むことで、それに向かって何度も挑戦する経験を得られます。これにより、自然と大きな目標に取り組む姿勢が身につきます。
部署間のコミュニケーションを促進
企業の目標を共有したうえで各部門の目標・成果指標が定められているため、同じ目標に向かってそれぞれの部門や個人がどう取り組むのかといった、部門間のコミュニケーションが期待できます。
モチベーションとエンゲージメントの向上
OKRでは、社員の成果指標が企業の目標と紐づいているため、自分が何のためにこのタスクに携わっているかを日々意識することになります。自分の仕事が企業にどのように貢献しているか意識することで、モチベーションとエンゲージメントが向上すると考えられています。
効果的なOKRの設定方法、運用方法とは?
OKRの目的(Objectives)の設定では、「挑戦的であるか」「魅力的かどうか」「一貫性があるか」に注意します。次に成果指標(Key Results ) に関しては、「目的と関連性があるか」「計測可能か」「容易ではないが、達成が可能か」「重要なものにフォーカスしているか」という4点に基づき設定します。成果指標が達成されても目的が達成されないOKRの設定とは適切ではありません。これらの点に気をつけて設定した各部門や個人のOKRをチームで確認・運用します。一度設定したOKRは、1ヶ月または3ヶ月ごとに見直し、週1回程度のミーティングで進捗を確認し、必要であれば成果指標を調整します。
OKRがエンジニア部門にもたらすメリットと導入事例
OKRの導入により、エンジニア部門が抱える以下のような課題が解決されます。
- やっている業務が他部署に理解されづらい
- 運用部門など他の部門との連携が難しい
- エンジニア個人の成果が見えづらくエンゲージメントやモチベーションが低い
- 会社の目標とエンジニア部門の目標がリンクしづらい
高度な専門性を求められる業務内容や、在宅・フレックス勤務を含む多様な勤務体制など、他部署と異なる部分も多く、他部署からの理解を得づらい場面もあるエンジニア部門。定性的な会社の目標やビジョンとエンジニア部門の目標が乖離してしまうこともしばしば起こります。OKRは、そんなエンジニア部門の課題を解決できるかもしれません。OKRがエンジニア部門にもたらすメリットを導入事例と共に見てみましょう。
Googleでは2000年ごろから導入を開始し、3ヶ月ごとにOKRを見直し、定期的なミーティングでOKRの評価を行なっています。達成度は70%程度に設定され、作業の進捗や評価内容は全スタッフで共有、確認できるようになっています。わかりづらかったエンジニア部門のタスク内容や進捗が明確化され、部門間の連携強化につながっています。全社的に浸透度も高く、OKRの導入がGoogleを世界規模の会社へ押し上げたとの見方もあります。
メルカリ
企業が急成長した2015年ごろより導入を開始。OKRとしてエンジニアは、担当するプロジェクトの他に「新しい技術習得」などの個人的なOKRも設定しています。定期的にエンジニアチームのマネージャーと進捗確認や振り返りを行いながら、OKRを運用します。マネージャーと成果目標を定めることで、チームの成長とエンジニアの成長がリンクし、エンジニア部門全体でモチベーションアップを実現しています。
Sansan
MBOを採用していたものの、会社の目標とエンジニア部門の目標がリンクしづらくOKRに変更。会社の方針を受けて部門の方針を決め、その中で個人のOKRを設定することで、開発するプロダクトの方向性や業務の意義をエンジニアが理解しやすくなりました。また全社で掲げる定性的な目標への貢献度とOKRの達成度をバランスよく参考するなどし、独自の人事評価にもOKRを取り入れています。
OKR導入はツールで自動化するのがおすすめ
ここまでOKR導入が企業にもたらすメリットについて述べてきましたが、どのようにOKRを始めたらいいのかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。全社でOKRを導入するとなると管理にあてるリソースが増えてしまうことも事実です。企業が抱える課題に対する認識の共有や、短期的に見直されるOKRの内容、頻繁に変更される評価指標などをわかりやすく管理しなくてはなりません。こういった煩雑なステップを統括してくれるのがOKR支援ツールです。ツールを使うことで、目標の設定や成果指標の変更、社内共有までを一元管理できます。また、タスクに割り当てるユーザーの設定やタスク進捗の追跡なども簡単な操作で行うことができます。エンジニアなど特定業種に特化したOKR導入支援ツールもあり、運用までのすべてのステップを一括でサポートしてくれます。
OKR導入にあたってGitLabができること
OKRの導入、運用を包括的にサポートし実現するAPIツールが「GitLab」です。GitLabなら、OKRの導入から運用までに必要な内容が一元管理できます。最適なOKRの設計、タスクの割り当て、進捗の共有など、OKRに必要なさまざまな業務を効率的に実施できます。初心者にも使いやすいUIや、DevSecOpsに強いGitLabならではのセキュアな環境を提供し、エンジニア部門だけでなく運用部門も含めて全社的に使っていただける「OKRの導入に最適なツール」です。
OKRについてよくある質問
OKRはどんな意味ですか?
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略で、「目標と成果指標」などと呼ばれる目標管理手法のひとつです。
OKRとKPIの違いは何ですか?
OKRは、企業としての目標から逆算された高い目標(60〜70%の達成を目指す)に向けて、よりイノベーティブな成長を目指す指標とされ、人事評価と強く結びつけないことがほとんどです。一方KPIは、最終目標に対してプロセスごとの定量的ゴールを設定し、目標達成のための成果進捗管理が主な役割となります。KPIでは、業績の向上に直結する指標を使って100%達成を目指す目標を設定します。
OKRを導入するときに気をつけることを教えてください
導入の際に気をつけるポイントとしては、以下の4つが挙げられます。
- OKRは社内全体で公開、共有する
- 月1回または四半期に1回、内容確認を行い、成果指標などを最適化する
- OKRは、60〜70%の達成度でも成功とするチャレンジングな目標とする
- OKRの導入や運用の負担を軽減するため、適切なツールを導入することが望ましい
OKRを始めるには、特化した支援ツールの導入がおすすめです。簡単かつ安全にOKRを自動化するならGitLabにお問合せください。