世界各地のDevSecOpsの専門家5,000名を対象に行われた今年の調査は、組織がAIなどの新しい技術を導入する中、投資の優先分野を見直していること、またデベロッパーエクスペリエンスを向上させる方法をより入念に検討していることが示唆される結果となりました。この記事では、今年の調査で明らかになったさらに驚くべき3つの結果を紹介し、それらが2024年以降、ソフトウェアの開発、オペレーション、セキュリティを担当するチームにとって何を意味するのかを見ていきます。
1. AIにより煩雑なツールチェーンの欠点が浮き彫りに
今年の調査では、AIが既存のツールチェーンに対するDevSecOpsチームの意識にどのような影響を与える可能性があるかについて、特に注目しました。その結果、やや意外な事実が判明しました。AIによりソフトウェア開発を簡素化できることはご存知のとおりですが、調査の結果、現在AIを使用している回答者は、AIを使用していない回答者よりもツールチェーンに不満を感じている可能性があることが判明しました。
現在AIをソフトウェア開発に使用している組織の回答者の4分の3近く(74%)が、またAIを使用していない組織の回答者の57%がツールチェーンを統合したいと回答しています。ただし、2つのグループ間で回答者が使用していると報告したツールの数に大きな差はありませんでした。つまり、現在AIを使用している回答者は、より多くのツールを使用しているわけではないものの、ツールチェーンを統合する必要性を強く感じていました。
AIの使用が統合への欲求を加速させるのは一体なぜでしょうか?1つ考えられる理由として、さまざまなポイントソリューションで異なるAIモデルが実行されたために、ソフトウェア開発ライフサイクルにおいて手に負えない(かつ測定不能な)無秩序の状態が生じ、組織の煩雑で非生産的な既存のツールチェーンの欠点が浮き彫りになったことが挙げられます。組織がAIへの投資を増やすにつれ、乱立するツールチェーンの統合・簡素化することで効率性を向上させる必要性が高まります。ツールチェーンの規模が小さいほどチームがAIから得られる価値は大きくなり、ソフトウェア開発ライフサイクル全体でAIの統合が容易になります。
今年のソフトウェア開発における最大の課題は、「(AIツールを含む)ツールの数とコンテキストスイッチ(頭の切り替え)が多すぎる」ことだと答えた回答者がいる一方、別の回答者は「全社的にさまざまなツールが断片化されていて複雑な状況」 であることだと述べています。
さらに、別の回答者は次のように述べ、AIによってツールチェーンの課題を解決できる可能性を強調しました。「AIは急成長しており、AIを統合することによって既存のツールチェーンは大幅に改善できます。チームメンバーをさらにトレーニングし、日々の業務で効果的にAIを活用する方法を学んでもらう必要があります」
2. AIによりデベロッパーのオンボーディング時間は短縮されるものの、依然として懸念を抱く組織
今年の調査では、チームで使用されるツール数の増加に伴い、デベロッパーのオンボーディング(新しく組織やチームに加入したメンバーが活躍できるように体制を整えること)にかかる時間も大幅に増加していることがわかりました。今年は70%の回答者が自社のデベロッパーのオンボーディングと生産性向上には1か月以上かかると述べており、2023年の66%から増加しました。
AIを活用したチャットアシスタントやコード提案を使用すれば、デベロッパーのオンボーディング時間を短縮できることは当然ですが、今回の調査では驚くべき効果が明らかになりました。ソフトウェア開発にAIを使用していると答えた回答者は、デベロッパーのオンボーディングには通常1か月未満しかかからないと答える傾向がより強く見られました。
AIがデベロッパーエクスペリエンスにもたらすメリットは明白であるものの、回答者はAIの急速な採用に関して、いくつか懸念を表明しました。回答者の半数以上(55%)が、ソフトウェア開発ライフサイクルへのAIの導入にはリスクが伴うと述べており、49%は今後5年以内に現在の職務をAIに取られることを危惧していると答えています。
業界リサーチ会社であるRedMonk社のシニアアナリスト、Rachel Stephens氏は、これらの調査結果について次のような見解を述べています。「AIをどのように感じるかには、心理的安全性とチームの文化といった要素が影響を及ぼします。人々はセキュリティやAIによるプライバシーへの影響を心配している可能性がある一方、準備できていないという意識は、AIにより自分の生業に個人的なリスクが生じるという考えが根底にあるのかもしれません」
GitLabでは、AIの価値は、繰り返しの作業を自動化し、外からは見えない部分を最適化することで、チームメンバーが高度な問題解決、イノベーション、価値創造に集中できるようになることだと考えています。AIは、ソフトウェア開発における人的要素を置き換えるわけでなく、補完するものです。ある回答者は、このことを次のように簡潔に言い表しました。「私たちは、AIに頼りながら創造力を育み維持していくという課題に直面しています。あくまでAIは、クリエイティブな人たちが生産性の妨げとなる不要なものを排除するために使用するツールの1つであることを忘れてはなりません。人間の創造力に取って代わるものではないのです」
3. クラウドはあって当たり前の存在に
GitLabが実施した調査では、クラウドコンピューティングは過去数年間一貫してIT投資分野の上位にランクインしています。2022年には、クラウドコンピューティングはセキュリティに次いで2位にランクインし、2023年は1位という結果になりました。これは、組織に対するデジタルトランスフォーメーションへのプレッシャーが高まっている現状を考えると、当然のことです。
しかしながら、2024年にはクラウドコンピューティングは大幅に順位を落とし、IT投資分野で5位という結果となりました。その一方で、クラウドが引き続き重要な要素であることは明らかです。実際に、アプリケーションの50%以上をクラウドで実行していると答えた回答者数は大幅に増加しました。これは、クラウドが多くの企業にとって依然として業務や使命の達成において不可欠である一方、その存在は「あって当たり前」のものとして、技術チームとITリーダーの優先事項にその他の新しい要素が追加され続けていることを示唆しています。
RedMonk社のStephens氏は、次のように述べています。「通常、資金面で制約のある財務環境にあることから、テクノロジーに投資する際には優先順位を決める必要があります。そのため、組織はデジタルトランスフォーメーションに関する予算の一部をAIなどのテクノロジーに再配分することがあっても、そのすべてが使われるわけではないのです。」
今年のレポートを確認しよう
AIやセキュリティ、デベロッパーエクスペリエンスなど、さまざまなインサイトを得られる2024年グローバルDevSecOps調査の全文をぜひご覧ください。