ブログ DevSecOps DevOpsDive2024 Summerで、ソフトウェア開発におけるセキュリティを考える【イベントレポート】
公開:October 7, 2024
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DevOpsDive2024 Summerで、ソフトウェア開発におけるセキュリティを考える【イベントレポート】

2024年6月12日に開催した「GitLab DevOpsDive2024 Summer」のイベントレポートをお届けします。

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2024年6月12日、GitLabはGINZA SIXの地下にある観世能楽堂において国内で3回目のプライベートイベント「DevOpsDive2024 Summer」を開催しました。本イベントは、DevOpsDevSecOpsにかかわる人々が集い、集合知を作りたいという思いでスタート。今回のテーマは「ソフトウェア開発におけるセキュリティを考えよう」に設定しました。能楽専門の公演場を会場に、登壇者が足袋を履いて能舞台で話をするという演出は、デベロッパー界隈を少し賑わしたようなので、イベントがあったことを知っている読者の皆様もいらっしゃるかもしれません。このブログでは、当日の模様をお伝えします。

シフトレフトでサイバー攻撃に立ち向かう

この日は、6月ながら都内で気温が30度を超える真夏日になりました。アイスブレイクに登壇した川口 修平は、「暑い中、激アツなイベントへようこそ」と会場を沸かせ、「終了後の懇親会ではオリジナルビールで乾杯しましょう!」と呼びかけました。ビールはGitLabのイシューを使って醸造所の担当者とやり取りしながら作り上げたものです。

商品名:Gitlab Hazy Gen3 イシューを使って作り上げたビールの紹介(Instagram)

このように親しみやすい雰囲気で始まったイベントですが、日本においてDevSecOpsはまだまだこれから。実際に、『DX白書』でも北米のDevSecOps利用率52.9%に対し、日本は9.3%にすぎません。このギャップを埋めるためには、サイバーセキュリティの現状を正しく理解し、それと対峙するためのソフトウェア開発について考えておく必要があります。

1人目の登壇者となったタニウム合同会社 Chief IT Architect 楢原 盛史氏は、「見えないものは守れません」と話します。現在、私たちが直面している主な脅威はランサムウェアとサプライチェーン攻撃で、脅威は脆弱性のある場所を起点に忍び込んできます。

全社で1万台のPCを使っている企業は、平均20%が管理されていない“野良端末”であると言われています。そして、攻撃者はここを狙ってくるのです。
(楢原 盛史氏)

DSC4331 タニウム合同会社 Chief IT Architect 楢原 盛史氏

同氏は、サイバー攻撃の対象は組織が管理するハードウェアにインストールされたすべてのソフトウェアであり、中でもセキュリティ対策が万全でない自社開発のソフトウェア、およびそれに組み込まれたOSSが狙われやすいと指摘します。実際に、OSSコードベースの80%に脆弱性が含まれると言われており、ソフトウェア・サプライチェーン攻撃では、主にCI/CDパイプラインが狙われます。

実際に、昨今は大企業が攻撃されて被害に遭ったニュースが数多く報じられています。私たちは、被害者の金銭的損害や株価の暴落を目にしていますし、医療機関への被害は生命を危うくする事態に直結します。経営もこれらの事態を深刻に受け止めていますから、セキュリティへの投資はホットな話題になってきました。

とはいえ、ほぼすべてのシステムはネットワークと切り離すことができません。完全に切り離されたシステムであっても、ファイルやデータのインポートを通じて外部と全く情報をやり取りしないことはないでしょう。実用性を重視する以上、完全なセキュリティを保つのは事実上不可能であると言っていいかもしれません。

その中で、脅威に立ち向かうためには、シフトレフトの原則が大切になります。米国家情報長官室(ODNI)は、DevSecOpsが重要だと通達し、取り組みの必要性を強調しています。日本でも、デジタル庁が『セキュリティ・バイ・デザインガイドライン』を発行しました。そこでは、DevSecOpsがセキュリティ品質を底上げできると明記されています。DevSecOpsでセキュアな開発ライフサイクルを実現し、高速かつ頻繁なテストサイクルを回すことが、セキュリティを担保するひとつの答えになるのです。

責任を自分に集中させて仕組みを作り、その後に分散する

DSC4608 左よりCloudflare Japan株式会社 エバンジェリスト 亀田治伸氏、くら寿司株式会社 執行役員 DX本部長 中林 章氏、GitLab合同会社カントリーマネージャー小澤正治

イベントの後半は、3者の鼎談セッションになりました。GitLab Japan Country Manager小澤 正治をモデレーターに、くら寿司株式会社 執行役員 DX本部長 中林 章氏、およびCloudflare Japan株式会社 エバンジェリスト 亀田 治伸氏が登壇。話題は、くら寿司のDevSecOps推進事例が中心になりました。

くら寿司は、数ある回転寿司チェーンの中で、技術への投資による業務効率化を率先して実行してきた企業です。たとえば、食べ終えたお皿を自動的に洗い場まで流す仕組みである「水回収システム」を業界で初めて開発したことは有名で、寿司ロボットをいち早く回転寿司で導入するなど、その後も技術投資を続けて様々な作業工程の自動化とおいしさを追い求めています。デジタル投資にも積極的で、「くら寿司ならでは」のDXを推進中。様々なタッチポイントから流入する予約システムや、店舗のタッチパネル型オーダーシステムなどの強化/開発を進めています。現在は、「お客様サービスと事業活動のリアルタイム連携」を目指すフェーズにあります。

ただ、同社はそこに至るまでに本質的な課題を抱えていました。中林氏は、「プロセスが整備されておらず、成果物の紐づけ管理が不十分でした」と話します。戦略会議が2週間ごとに開催されるため、開発サイクルはそれに合わせる必要があります。開発プロセスを統合管理することも必要で、要件定義書やスケジュール、ソースコードのレポジトリといったすべての成果物および中間成果物を必要な人が必要なタイミングで入手できる環境を整える必要もありました。

DSC4593 くら寿司株式会社 執行役員 DX本部長 中林 章氏

この状況を抜本的に解決するために、中林氏はDevOpsという文化を取り入れることを決断。GitLab Ultimateを採用し、他社とは一味違うDXに向けて進み始めます。多くのB2C企業は、顧客に会員登録してもらってロイヤルティを高めていく方向性で顧客戦略を考えます。一方、くら寿司はインバウンド顧客など一過性の顧客も大切にしなければなりません。そのため、ロイヤルティ向上施策と一見さん施策の両面で、多数のプロジェクトを同時並行し、スピード感をもって進められるようになりました。戦略会議で進捗報告し、新規施策の提案と承認、および新たなニーズの把握と共有を行うプロセスもGitLabで最適化。短期サイクルを実現するバックアップ体制も整えました。

セキュリティについてはどうでしょう。中林氏は、「“セキュリティが担保されている”とはどのような状態なのでしょう。静的/動的検査をすればセキュリティが担保できるわけではないですよね。そこで、私たちはプロセス、ルール、成果物のすべてが正しく管理されていることが大切であるという結論に達しました」と話します。

経営者にセキュリティを完璧に理解してもらうことは難しいものです。ですから、まず責任を自分に集中させて、仕組みを作りあげることが大切。そして、その後に破壊します。つまり、責任を分散するわけです。
(中林 章氏)

GitLab Ultimateは、この流れを実現できるプラットフォームです。ビジネスにおけるバックログを記録しておけば、それを部門や現場がプロダクトのバックログとして認識できます。要件定義書からスケジュール、ソースコードまで、すべてを一元的に管理できるGitLabがあれば、経営と現場をつなぐことができるのです。さらに、プロセスの中にセキュリティを担保する仕組みを組み込み、業務の中でセキュリティをチェック/実装できるようになります。

DSC4701 Cloudflare Japan株式会社 エバンジェリスト 亀田 治伸氏


亀田氏は、くら寿司のリアルな現場の話を聞いて、次のような印象を持ったと語ります。

多くの企業を見ていると、権限が属人化しているケースをよく見ます。スタートアップなどの少数精鋭組織ではそちらの方が合うのでしょうが、規模が大きくなると難しくなります。くら寿司さんが集中管理から分散管理へと移行させるやり方は理想的で、GitLabを使えば権限委譲をうまくやれることも体感的に理解できます。
交通ルールを守れば、絶対に事故は起こりません。しかし事故は起きています。つまり、全員がまじめにルールを守らないのです。コンピュータが絡むデジタルにおいて、これは大きな教訓になりそうです。GitLabを使ってミスが起こりにくい仕組みを作ることが大切になるかもしれません。くら寿司さんはグローバル展開していますし、文化の違いも仕組み作りで乗り越えられる部分もあるでしょう。
(亀田 治伸氏)

くら寿司は、人々がデジタルに触れているタイミングをすべて機会としてとらえ、ビジネスに生かすという大きな目標に向かっています。グローバル展開を積極化させる中、セキュリティのルールが国・地域によって異なるという課題にも、すべての地域のメンバーが安心・安全に使えるデジタルを提供するという方向で一つひとつ解決しています。さらに、貴重なエンジニアを確保していけるような、楽しく働きやすい職場づくりを心がけ、エンジニアにとって心地よいカルチャーを育んでいきます。

GitLabを使えば、経営と現場がつながり、グローバルでセキュリティを担保する仕組みが実現します。そしてGitLabは、風通しの良い文化の醸成にも寄与します。くら寿司はGitLabで多くの成果を得ながらDXを推進しています。GitLabを開発プラットフォームとしてビジネスを加速するくら寿司の今後にご注目ください。

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